自然葬とは

30年ほど前から注目され先進国でも浸透してきた【自然葬】
日本でも宗教観の変化やライフスタイルの変化などにより旧来のお墓離れが進んでいます。そして代わりに樹木葬、海洋葬、宇宙葬などの自然葬も選ばれるようになってきました。

自然葬 (しぜんそう)とは、葬送の方式のうち、従来の形式の墓や骨壺でなく遺骨や遺灰を自然の循環の中に回帰させようとする葬送の方法
wikipedia 自然葬

自然葬の確定した定義はありませんが、Wikipediaではこのように書かれています。自然葬のポイントは、骨壺に入れないことと、自然に還ることですね。
ただ【自然葬】という言葉自体がここ数十年でできたものでいろいろな解釈があり、人工的なお墓に入らず、骨壺を墓石の下ではなく樹木の周りや花壇などに埋める樹木葬も自然葬ととらえている人もいます。

自然葬が増えている背景

日本だけでなく海外でも自然葬を選ぶ人が増えている背景にはいろいろな要素があるようで、これは人類が直面している大きな時代の波なのかもしれません。

先々お墓の維持が難しい

まず実際の問題として挙げられるのが、お墓の維持の問題です。日本では少し前まではお寺のお墓に先祖代々のお骨を納めるという形が一般的でした。
ところが核家族化が進み、実家を離れて生活する人が増えるとお墓から物理的に距離ができてしまい管理が難しくなってきています。
また「家を継ぐ」「家を守る」ということを考える人が減ってきて、これからお墓に入る本人も「家族にお墓の世話をさせるのは気が引ける」「死後に負担をかけたくない」と考える人が増えているのも大きな原因の一つです。
また地元から離れて身寄りが亡くなってしまうと、そもそもお墓を維持してくれる人がいないという現実もあります。

そのため、霊園や墓地の管理者に管理してもらう「永代供養」という形にして、数十年後は自動的にお墓を片付けてもらえるようにしたり、最初からお墓を作らない方法として自然葬を選ぶ方もいます。

宗教観の変化

また自然葬が増えた理由として、私たち自身の宗教観の変化も大きいでしょう。この100年ほどで人類の文明・科学・テクノロジーは大きく進み、それにともない私たちが一生のうちに受け取る情報は、昔の人と比べて何千何万倍にも増えています。その結果、宗教についても科学的な考え方や多様な価値観が浸透しています。

一昔前なら、死後は先祖代々のお墓で一緒に眠る・お寺で供養してもらう、というのが当たり前。風習や教義の違いなどはあっても、そこを疑問に思う人もあまり多くなかったのではないでしょうか。
ところが今は、世界中にいろいろな神様がいて、魂や死後の世界についても地域や宗教によっていろいろな考え方があります。科学的な知識によって宗教的か考え方が希薄な方も増えています。

以前のような父母や祖父母と同じ形で弔われるという家の決まりにこだわらず、自分の中で一番しっくりくる方法を選ぶという個人主義がめずらしくなくなってきていることも原因の一つでしょう。

自然志向

日本の一般的なスタイルでは、死後は火葬してお骨を骨壺に入れてお墓に納めます。骨壺に入れるとお骨は自然とは遮断されますので、自然の生命の循環とは離れた状態で保存されます。

それに対して遺灰や遺骨を骨壺に入れずに野山や海などに撒くいわゆる散骨は、骨壺に入らず土や水に溶けていきますので骨は自然の一部になっていきます。遺骨や遺灰は水に流されたり、植物に吸収されたり、生き物の一部になって、生態系に組み込まれ新たな生命に生まれ変わるのです。

私たちの生活は文明の進歩とともに、人工物が多い環境になりました。道は舗装され、自然と触れ合うことも減ってきています。
そんな現代人が、死後は骨壺に収まるのではなく自然に還りたいと考えるのも自然の流れかもしれません。

価格が安い

先祖代々のお墓に入るなら、そのお墓の維持費を遺された方が支払う必要があります。実家から離れたところに用意するならお墓を新たに購入したり、納骨堂などを手配する必要があります。

それに対して自然葬の散骨は、方法によっては非常に安く済むものがあり、また散骨してしまえばその後の管理費など維持費用も掛かりません。

自然葬の種類

従来のお骨をお墓に納める以外の方法は、1990年以降から徐々に増え始めました。自然葬のニーズにこたえる新たなサービス、お寺のサービスの多様化、技術の進歩によるもの、など様々なものがあります。
ここでは代表的なものをご紹介しましょう。

樹木葬(じゅもくそう)

樹木葬とは墓石の代わりに樹木を目印にして、その根元や周りに骨壺に納めた遺骨を埋めるというのが一般的です。

樹木葬は種類が豊富で、一般の墓地以上に豪華なものはお一人やご家族用に1本の樹木を区画として購入するタイプがあります。こちらはその区画を占有しますので普通にお墓と変わらないお値段です。

それに対して樹木のそばに数名分の遺骨を納めることができるスペースを購入するタイプや、他の方とまとめて埋葬してもらう合葬タイプは、5万円前後という非常にお手頃なお値段からあります。

特に最近は先祖代々のお墓を墓仕舞いして、合葬や永代供養をする場所を探している方も多いですよね。通常のお墓よりもリーズナブルな樹木葬は永代供養の場合も多く、あとで管理費等などで誰かに負担をかけずに用意できる形も人気があります。

また遺灰を骨壺に納めずに、樹木の周りに撒く散骨をするかたちの樹木葬もあります。山や森などで散骨するので、森林散骨・山林散骨などと呼ばれることもあります。
こちらは粉骨してしてから撒くので、散骨場所は墓地である必要がありません。そのため一般の企業やNPO法人などが、樹木の根元に撒くというよりもそれぞれが管理する野山に散骨するような形になります。
いろいろなタイプの樹木葬の中でも、何も残さず自然に還りたいという方にはこちらがおすすめです。

海洋葬(かいようそう)

海洋葬とは、遺骨や遺灰をお墓に納骨せず、海にまく形で供養する方法です。海洋散骨と呼んだりもします。
自然葬で散骨するときに、山や川は自分の所有地でなければいろいろ気になることも多いと思いますが、業者に依頼して海で散骨してもらうので場所について自分でアレコレ気を使ったり問い合わせたりする必要がありません。
海洋葬を行っている業者も結構な数があるので、地元の海、思い出の海、きれいな海など、ある程度場所を選んで依頼することも可能です。
もちろん、一部だけ海で散骨して、残りは手元に残しておいて供養したりするのも自由です。

「安いし海に撒いてもらったら気持ちよさそう」「家族に余計なものを残したくない」「海が好きだから」「死んだら何も残したくない」「生命の源の海に還って新しい命の一部に生まれ変わりたい」

海洋葬を希望する方の思いはひとそれぞれですが、現代の人の気持ちにあっているのか、とても人気があります。

業者に遺骨を渡して散骨を依頼することもできますし、遺骨をもって船に乗って自分で散骨することもできます。
ただ海洋散骨は天気にもよるので、スケジュールが難しいのが難点かもしれません。

お値段としては委託して撒いてもらうのは5万円前後から可能です。船を用意してもらって乗船して自分の手で散骨するとなると20万円以上はかかります。

それでもお墓に納骨するよりも格段に安いですし、すべて撒いて手元に残らなければ管理費なども不要です。

空中葬(くうちゅうそう)

空中葬とは、ヘリコプターやバルーンなどで上空に運んで、空から遺灰を撒く方法です。空からの散骨も解放感があっていいですよね。

海洋葬が船を使って散骨に向かうのに対して空中葬はヘリコプターやセスナ機などで上空に行ったり、バルーンで遺骨を運ぶ必要があるため、海洋葬と比べて業者に依頼する料金は高くなります。最低でも30万円はみておくべきでしょう。

宇宙葬

宇宙葬とは、ロケットなどで遺灰の一部を宇宙に送って供養する、壮大な埋葬方法です。一般的な宇宙葬は、数十人の希望者の遺灰をまとめて人工衛星に乗せて打ち上げて、数年地球の周りを回った後に大気圏に突入して燃え尽きるというものです。

ロマンがありますし

近年ロケットを民間の会社でも飛ばすことができるほど技術が進んだことで可能になりました。ただロケットで飛ばすとなると、遺灰の全てを送ることはできず、遺灰のうちの数グラム程度しか宇宙葬にはできません。残りの大部分の遺灰は別途供養する必要があります。

その他、ロケットで月まで運ぶとか、空中葬の延長線上ですがバルーンで成層圏まで飛ばして散骨するのも宇宙葬と考える方もいます。

費用は30万前後から数百万まで、値段が上がればよりゴージャスな供養のプランも選べます。